モランゲイロの神

帰路の前日、それだけを楽しみにしていたゼの店。何度も確認して、大丈夫だよ、水曜日までやってるから、最後も飲みにおいでといわれていたのに、いつものように階段を下りていくと無常にも緑の鎧戸が。固まる二人。頭は真っ白、せっかく今日はモランゲイロ漬けになって帰ろうと思っていたのに。旅にはいろいろなところに落とし穴がある。扉から顔を出したホセに訊くと、あんまり熱いからだって。しょんぼりして、みんなへのさよならを伝言して、フローレス通りの定食屋へ。すごくおいしかったのに、やっぱり気持ちはダウン気味。すっかり白髪になった二人は、とぼとぼと再びゼの前を通って部屋に戻ろうと。とそのとき、かすかに、鎧戸が開いている。ひょっとしたら、みんないるかもしれない。ホセと挨拶できただけでもよかったけど、やっぱりみんなとしたい。おそるおそる扉を開けると、すっかり什器を引っ張り出して、部屋中掃除をするオジョアンが。カルメリンダもいる。すっかり笑顔で挨拶。もう帰るんだよ。カルメリンダは、入れ入れと僕らを店へ。そして、掃除の手を休めて、モランゲイロを注いでくれた。今までで一番のモランゲイロ。あとから、大御所ゼも登場。バガッソを1本購入予定が、結局いただいて、みんなとキスして、でも掃除の手をあまり休めさせてはと早々と帰路へ。でも、うれしかった。僕はモランゲイロの神様のおかげだと思った。神様が鎧戸を少し開けておいてくれたのだと。しかし、すっかりほんわか上機嫌の二人と夕方合流した、将来カボベルデ在住予定のフルーティストO嬢は、でも扉を開けたのはあなたでしょと諭してくれた。ああそうなんだ、モランゲイロの神って、僕たちのことだったんだとすっかり誤解して、その後、カイリー・ミノーグ好きのMちゃんも合流して、リスボン最後の夜はレゲエバーで過ぎていったとさ〜。モランゲイロの神様、バガッソの神様、エントレコストの神様、本当にありがとう!